同じIT職でも178.5万円違う
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査は、IT関連の職種をいくつかの区分に分けて集計しています。並べてみます。
| 職種区分 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| 電気・電子・電気通信技術者 | 755.2万円 | 43.8歳 | 15.7年 | 479,050人 |
| システムコンサルタント・設計者 | 752.6万円 | 41.4歳 | 14.5年 | 149,050人 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 628.9万円 | 43.4歳 | 10.7年 | 343,290人 |
| ソフトウェア作成者 | 574.1万円 | 38.0歳 | 10.7年 | 779,260人 |
いちばん人数が多いのはソフトウェア作成者(約77万9千人)で574.1万円。対してシステムコンサルタント・設計者は752.6万円で、差は178.5万円あります。
この2つの区分の違いを乱暴に言えば、作る側か、決める側かです。要件を決め、構成を設計し、どう作るかを規定する側と、規定されたものを実装する側。どちらも技術がなければ務まりませんが、金額の付き方は違います。
差は年齢とともに開いていく
ここがこの記事の核心です。2つの区分を年齢階級別に並べます。
| 年齢階級 | ソフトウェア作成者 | システムコンサルタント・設計者 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 347.8万円 | 433.2万円 | +85.4万円 |
| 25〜29歳 | 469.6万円 | 570.4万円 | +100.8万円 |
| 30〜34歳 | 541.1万円 | 680.5万円 | +139.4万円 |
| 35〜39歳 | 631.4万円 | 807.2万円 | +175.8万円 |
| 40〜44歳 | 650.5万円 | 904.4万円 | +253.9万円 |
| 45〜49歳 | 738.0万円 | 874.8万円 | +136.8万円 |
| 50〜54歳 | 695.4万円 | 851.1万円 | +155.7万円 |
| 55〜59歳 | 730.8万円 | 894.9万円 | +164.1万円 |
差の列を上から追ってください。20代前半で85.4万円だったものが、40〜44歳では253.9万円まで開きます。3倍近い開き方です。
もうひとつ見ておきたいのがピークの位置です。システムコンサルタント・設計者は40〜44歳の904.4万円でピークに達しますが、ソフトウェア作成者が同じ年代で到達しているのは650.5万円。ソフトウェア作成者が45〜49歳でようやく738.0万円に届く頃、コンサル・設計側はすでに5年前に900万円台を通過しているということになります。
水準が高い方が、人数は少ない
労働者数を見ると、構造がもうひとつ分かります。
| 年齢階級 | ソフトウェア作成者 | システムコンサルタント・設計者 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 92,990人 | 9,210人 |
| 25〜29歳 | 165,240人 | 22,100人 |
| 30〜34歳 | 107,650人 | 19,350人 |
| 35〜39歳 | 94,030人 | 20,200人 |
| 40〜44歳 | 81,850人 | 16,650人 |
| 45〜49歳 | 95,590人 | 18,760人 |
| 全体 | 779,260人 | 149,050人 |
全体で約5.2倍の開きがあります。水準の高い区分ほど人数が少なく、多数派は水準の低い側にいるという構造です。
年齢別に見ると、ソフトウェア作成者は25〜29歳の165,240人がピークで、30代に入ると10万人前後まで減ります。一方でシステムコンサルタント・設計者は、25〜29歳の22,100人から45〜49歳の18,760人まで、大きくは減りません。入口が広く出口で絞られる側と、入口が狭いかわりに残り続ける側、という対比になっています。
上がる転職と、上がらない転職の分かれ目
ここまでの数字を踏まえると、動く条件は整理できます。
| パターン | 年収への影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 実装から設計・要件定義側へ役割を移す | 上がりやすい | 区分間で平均178.5万円の水準差がある |
| 受託から事業会社の内製へ移る | 上がることがある | 人月単価ではなく事業の利益から配分される |
| フリーランスとして単価契約に切り替える | 上がることがある | ただし賞与・社会保険・稼働の保証がなくなる |
| 同じ役割のまま別の会社へ移る | 横ばい | 担当工程が変わっていないため構造的に上がらない |
| 40代に入ってから役割を変えようとする | 難しくなる | 差が開き切った後は、間を埋める実績が求められる |
最後の行が、この記事でいちばん実務的な話です。年収の差は40代前半で最大になりますが、それは裏を返せばその手前で役割を動かしておく方が、差を埋める距離が短いということです。30〜34歳の時点なら差は139.4万円、35〜39歳なら175.8万円。40〜44歳の253.9万円と比べれば、届く距離にあります。
求人票で見落とされやすい項目
1. 「年収◯◯万円〜◯◯万円」の下限で決まりがち
ITの求人票は幅を持った提示が一般的ですが、実際に提示される金額は現年収を基準に決まることが多く、レンジの上限は経験者向けに用意されているのが実情です。レンジの広さだけで判断すると、実際のオファーとの差に驚くことになります。
2. みなし残業の時間数が年収に含まれている
提示年収に固定残業代が含まれている場合、その時間数を確認しないと時間あたりの単価が比較できません。年収が50万円高くても、みなし残業が月20時間分多ければ、実質的には割に合っていないということが起こります。
3. 担当工程が入社後に決まる
いちばん影響が大きいのがこれです。この記事で見てきたとおり、年収を分けているのはどの工程を担当するかです。求人票に「設計から携われます」と書かれていても、実際の配属で決まるのが実態です。選考の段階で、入社直後に担当する工程を具体的に確認しておく必要があります。
IT分野に強いエージェントは、企業ごとの実際の配属傾向や、レンジのどのあたりで提示されることが多いかを持っていることがあります。求職者側の費用は無料で、料金は採用が決まった時に採用側が負担する仕組みです。2〜3社を併用して比較するのが基本形になります。
動く前に、自分の適正年収を確かめる
ここまで読んで「では自分はいくらもらえるはずなのか」が分からないと、結局は動けません。そして、この基準を持たないまま相談に行くと、提示された条件が高いのか安いのかを判断できないまま話が進みます。
本サイトの年収シミュレーターは、職種・年代・希望する方向を選ぶだけで、適正年収の目安と、上げられる金額の幅、そしてその条件に合う相談先を出します。所要時間は30秒、登録もメールアドレスの入力も必要ありません。
よくある質問
ITエンジニアの平均年収はいくらですか?
令和6年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)では、職種によって差があります。ソフトウェア作成者が574.1万円(平均38.0歳・約77万9千人)、その他の情報処理・通信技術者が628.9万円(同43.4歳・約34万3千人)、システムコンサルタント・設計者が752.6万円(同41.4歳・約14万9千人)です。同じIT職でも、担当する工程によって水準が分かれています。
システムコンサルタント・設計者とソフトウェア作成者では年収がどれくらい違いますか?
平均では178.5万円の差があります(752.6万円と574.1万円)。さらに年齢階級別に見ると差は開いていき、25〜29歳で100.8万円、30〜34歳で139.4万円、35〜39歳で175.8万円、40〜44歳では253.9万円になります。年齢が上がるほど、担当する工程の違いが金額に反映される幅が大きくなります。
ITエンジニアの年収は何歳がピークですか?
職種によって異なります。ソフトウェア作成者は45〜49歳の738.0万円がピークで、その後は50〜54歳695.4万円、55〜59歳730.8万円と横ばいに近い動きをします。システムコンサルタント・設計者は40〜44歳の904.4万円がピークで、45〜49歳874.8万円、50〜54歳851.1万円と緩やかに下がります。どちらも60〜64歳で大きく下がります。
ソフトウェア作成者とシステムコンサルタント・設計者では人数はどちらが多いですか?
ソフトウェア作成者が約77万9千人、システムコンサルタント・設計者が約14万9千人で、およそ5.2倍の開きがあります。つまり年収水準の高い区分の方が人数は少なく、多数派は水準の低い側にいるという構造です。
未経験からITエンジニアになった場合、年収はどのくらいから始まりますか?
この調査は経験の有無を区別していないため、未経験者だけの数字は分かりません。参考として年齢階級別で見ると、ソフトウェア作成者の20〜24歳が347.8万円、25〜29歳が469.6万円です。20代前半から後半にかけて121.8万円上がっており、この職種は初期の伸びが比較的大きい部類に入ります。
フリーランスになれば年収は上がりますか?
この調査は雇用されている労働者が対象のため、フリーランスの年収は含まれていません。判断材料としては、雇用されている場合に得られる賞与・社会保険の事業主負担・稼働が途切れた期間の保証が、単価契約では自己負担または無くなる点を差し引いて比較する必要があります。単価の月額だけを現在の月給と比べると、実態より有利に見えます。