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経理の年収は「担当できる範囲」で決まる。
記帳から開示までの階段

公開: 2026年8月17日

経理の年収を決めているのは、在籍年数でも資格の数でもなく、任されている業務がどこまでかです。記帳から開示まで並ぶ工程のどこに立っているかで水準が変わります。この階段の構造と、上の段へ移るための転職の考え方をまとめました。

経理の年収を決めている「階段」

経理という仕事は、ひとつの職種名でくくられていますが、中身は工程の集まりです。そして工程には順番があり、上に行くほど代わりが利かなくなります。年収の水準は、このどこまでを一人で回せるかにほぼ対応しています。

工程主な業務代替のしやすさ
記帳・伝票仕訳入力、経費精算、入出金管理高い(外注・システム化が進んでいる領域)
月次決算月次の締め、試算表作成、増減分析中程度
年次決算決算整理、税務申告の基礎資料、監査対応低い
連結決算グループ会社の合算、内部取引の消去かなり低い
開示・IR有価証券報告書、決算短信の作成低い(担える人が限られる)

下の工程ほど、システム化と外注化が進んでいます。記帳だけを担当している状態は、年収が上がりにくいだけでなく、担当そのものが縮んでいく方向にあります。逆に、年次決算より上に関わっていれば、担い手が限られる分だけ評価されます。

年数では止まる、という事実

この「階段」の話を裏づける数字があります。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査から、経理を含む会計事務従事者の年齢階級別年収を並べます。

年齢階級年収前の階級からの伸び労働者数
20〜24歳338.0万円36,490人
25〜29歳432.8万円+94.8万円56,010人
30〜34歳487.2万円+54.4万円49,890人
35〜39歳535.2万円+48.0万円49,320人
40〜44歳557.1万円+21.9万円52,720人
45〜49歳562.1万円+5.0万円66,560人
50〜54歳579.7万円+17.6万円72,050人
55〜59歳572.1万円−7.6万円54,690人

伸び幅の列を上から見てください。20代で年94.8万円・54.4万円と大きく動いた後、40〜44歳で+21.9万円、45〜49歳では+5.0万円まで落ちます。そして55〜59歳では減少に転じます。40代に入ると、年数を重ねること自体は年収をほとんど動かさなくなるということです。

もうひとつ注目したいのが労働者数です。45〜49歳が66,560人、50〜54歳が72,050人で、ここが人数のピークになっています。年齢が上がっても人が減らない職種であり、つまり同じ層に人が滞留しているとも読めます。年数だけで抜きん出ることが難しい構造です。

では何が段を変えるのか。同じ調査の別区分と比べると、はっきりします。

区分平均年収平均年齢平均勤続年数労働者数
公認会計士・税理士856.3万円43.1歳11.1年20,210人
会計事務従事者509.3万円43.4歳12.7年482,860人

平均年齢はほぼ同じ(43.1歳と43.4歳)で、勤続年数はむしろ会計事務従事者の方が長いにもかかわらず、年収の差は347.0万円あります。年齢でも勤続でもない何かが、この差を作っているということです。それが冒頭の「どこまでを一人で回せるか」であり、その到達点のひとつが有資格者の領域だと考えると、この2つの数字はきれいにつながります。

出典 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種別第1表・第5表(e-Stat で公開、2025年3月17日公表)。企業規模10人以上、男女計の値です。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出しており、実際の年収は残業や賞与の変動で前後します。「会計事務従事者」は経理担当者を含む職種区分で、経理単独の集計ではありません。

今の職場では上の工程に触れないことがある

問題は、上の工程に上がりたくても今の職場では触らせてもらえないことがある点です。理由は能力ではなく、体制の問題であることがほとんどです。

このうち上の3つは、努力や年数では解決しません。その会社に存在しない業務は、何年いても経験できないからです。経理で年収を上げる転職が「工程を上げる転職」と言われるのは、この構造があるためです。

在籍年数が長いほど有利、とは限らないのが経理の難しいところです。記帳中心の職場に10年いた人より、決算を3年回した人の方が評価されることがあります。年数ではなく職務経歴書に何の工程を書けるかで判断されます。

事業会社と会計事務所、伸び方の違い

経理・会計の経験を活かす先は、大きく事業会社と会計事務所・税理士法人に分かれます。年収の伸ばし方の設計が違うので、どちらが高いかではなく、どちらの伸び方に乗りたいかで考える方が実際的です。

事業会社の経理会計事務所・税理士法人
年収の決まり方企業規模と担当工程担当件数・専門領域・資格
経験の広がり方1社を深く見る多数の会社を横に見る
上限の作られ方ポストの空き資格と顧客規模
向いている人事業に関わりたい専門性を積み上げたい

事業会社の中でも、上場企業とそうでない企業では触れる工程が変わります。連結や開示を経験したいなら、そもそもその業務が存在する規模の会社を選ぶ必要があります。

資格をどう位置づけるか

簿記や税理士科目は、それ自体が年収を上げるというより、応募できる求人の範囲を広げるものと捉える方が実態に近いです。

注意したいのは、取得しただけでは在籍中の年収は動きにくい点です。資格手当が制度としてない会社も多く、資格が金額に反映されるのは多くの場合「その資格を前提とした求人に応募したとき」です。取ったなら、市場でどう評価されるかを一度確認する価値があります。

会計・税務の専門特化エージェントがある 経理・会計は、総合型のエージェントより専門特化型の方が求人の質が揃うことがある領域です。会計士・税理士向け、経理職向けといった形で分かれているので、自分の位置に合うところに相談する方が話が早く進みます。求職者側の費用は無料です。

動く前に、自分の適正年収を確かめる

階段の構造が分かっても、「今の自分の位置ならいくらか」が分からなければ動けません。基準を持たずに相談へ行くと、提示された条件が妥当なのか判断できないまま話が進みます。

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よくある質問

簿記2級を取れば年収は上がりますか?

資格そのものより、その資格で任される業務が変わるかどうかで決まります。簿記2級は月次・年次決算に関わる前提として見られることが多く、応募できる求人の範囲が広がる効果はあります。ただし取得しただけで在籍中の年収が上がるとは限りません。

会計事務所と事業会社、どちらが年収は高いですか?

一概には言えません。事業会社は企業規模と担当範囲で決まり、会計事務所は担当件数や資格の有無で決まります。年収の伸ばし方の設計が違うため、どちらが高いかではなく、自分がどちらの伸び方に乗りたいかで選ぶ方が実際的です。

経理は未経験から入れますか?

入口はあります。ただし未経験で入れるのは記帳や入出金管理といった下の工程が中心で、そこから決算に関わる工程へ上がれるかは配属先の体制によります。入社時に「決算のどこまで触れるか」を確認しておくことが重要です。

転職エージェントは無料で使えますか?

求職者側は無料です。採用が決まった時に採用側が費用を負担する仕組みのため、相談や求人紹介の段階で費用は発生しません。

今の会社に連結決算がない場合、経験は積めませんか?

その会社では積めません。連結はグループ会社が存在して初めて発生する業務です。連結や開示を経験したいのであれば、その業務が存在する規模の会社へ移ることが前提になります。