施設の種類だけで月7万円近く違う
こども家庭庁が5年ぶりに実施した「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」(令和6年度)に、私立施設で常勤として働く保育士等の給与月額が、施設の類型別に出ています。
私立施設・常勤の1人当たり給与月額(賞与の1/12を含む)
| 施設・事業の類型 | 給与月額 | 平均経験年数 |
|---|---|---|
| 家庭的保育事業(家庭的保育者) | 36.8万円 | 18.2年 |
| 保育所(保育士) | 34.8万円 | 11.2年 |
| 幼稚園・新制度(教諭) | 33.5万円 | 9.2年 |
| 認定こども園(保育教諭) | 33.2万円 | 9.8年 |
| 小規模保育・C型(家庭的保育者) | 30.4万円 | 13.1年 |
| 事業所内保育・20人以上(保育士) | 30.1万円 | 11.2年 |
| 小規模保育・B型(保育士) | 30.0万円 | 10.7年 |
| 小規模保育・A型(保育士) | 29.4万円 | 9.4年 |
| 事業所内保育・A型適用(保育士) | 28.2万円 | 9.6年 |
| 事業所内保育・B型適用(保育士) | 27.9万円 | 11.0年 |
保育所(34.8万円)と事業所内保育事業・B型適用(27.9万円)を比べると、月6.9万円の差があります。単純に12倍すれば年間約83万円です。しかもこの2つは平均経験年数がそれぞれ11.2年と11.0年で、ほぼ同じキャリアの人同士の比較になっています。経験を積んだから差がついたのではなく、施設の類型そのものが差を生んでいます。
公立と私立、常勤と非常勤で答えが逆になる
「公立の方が給料が高い」というのはよく言われる話で、常勤に関してはその通りです。ただし非常勤では逆転します。同じ調査の保育所の職種別データを見ると、はっきり出ています。
保育所の1人当たり給与月額(賞与込み)・職種別
| 職種 | 私立・常勤 | 公立・常勤 | 私立・非常勤 | 公立・非常勤 |
|---|---|---|---|---|
| 施設長 | 581,997円 | 643,192円 | 425,554円 | 222,524円 |
| 主任保育士 | 473,532円 | 564,357円 | 288,817円 | 241,026円 |
| 保育士 | 348,119円 | 365,542円 | 243,404円 | 190,521円 |
| 保育補助者(無資格) | 254,396円 | 219,324円 | 189,744円 | 154,365円 |
| 栄養士 | 341,327円 | 376,074円 | 235,012円 | 257,090円 |
| 看護師・准看護師等 | 381,484円 | 419,349円 | 266,232円 | 235,115円 |
常勤の保育士は、公立が365,542円、私立が348,119円。公立が月17,423円高いという結果です。注目すべきは平均勤続年数で、公立は10.6年、私立は11.2年。つまり公立の方が勤続年数は短いのに給与は高いということで、経験の差ではなく制度の差だと読めます。
ところが非常勤では、私立が243,404円、公立が190,521円。私立の方が月52,883円も高いという結果になっています。パートや時短で働くことを前提にするなら、公立にこだわる理由はむしろ薄いということです。
もうひとつ見ておきたいのが主任保育士です。私立で473,532円、公立で564,357円。保育士との差は私立で月12.5万円、公立で月19.9万円あります。役職に就けるかどうかは、施設の規模や年齢構成によって現実的な可能性が変わるため、長く働く前提の職場選びでは「上がポストを空ける見込みがあるか」も条件のひとつになります。
資格の有無による差も明確です。私立・常勤で、保育士348,119円に対して資格を有していない保育補助者は254,396円。月93,723円、年間で約112万円の差がついています。
5年で4.6万円上がっている(相場観の更新が必要)
この調査は5年ぶりの実施で、前回(平成31年度)との比較が公表されています。ここが、転職を考えるうえで見落とされやすい部分です。
| 類型(私立・常勤) | 今回(令和6年度) | 前回(平成31年度) | 差 |
|---|---|---|---|
| 保育所(保育士) | 34.8万円 | 30.2万円 | +4.6万円 |
| 幼稚園・新制度(教諭) | 33.5万円 | 28.7万円 | +4.8万円 |
| 認定こども園(保育教諭) | 33.2万円 | 28.0万円 | +5.2万円 |
5年で月4.6〜5.2万円上がっています。処遇改善等加算をはじめとする施策が反映された結果です。これが意味するのは、「保育士は20万円台前半」という数年前の相場観のまま判断すると、実態とずれるということです。
とくに、その相場観のまま「どうせどこも同じだろう」と考えて動かずにいる場合、処遇改善が反映されている職場と、そうでない職場の差を取り逃がしている可能性があります。加算の取得状況は施設によって違うため、ここは実際に確かめないと分かりません。
上がる転職と、上がらない転職の分かれ目
ここまでの数字を踏まえると、給与が動くかどうかの分かれ目ははっきりしています。施設の類型と設置主体という「箱」が変わっているかどうかです。
| パターン | 給与への影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 小規模・事業所内から保育所へ移る | 上がりやすい | 類型間で月4〜7万円の水準差がある |
| 私立から公立(常勤)へ移る | 上がりやすい | 常勤では公立が月1.7万円高い |
| 公立から私立(非常勤)へ移る | 上がりやすい | 非常勤では私立が月5.3万円高い |
| 処遇改善加算の取得状況が良い園へ移る | 上がることがある | 加算の取得は施設ごとに差がある |
| 同類型・同規模へ移る | 横ばい | 箱が変わっていないため構造的に上がらない |
| 保育所から小規模・事業所内へ移る | 下がりやすい | 働きやすさと引き換えに水準が下がる |
最後の「保育所から小規模へ移る」は、下がると分かったうえで選ぶなら何も問題ありません。問題なのは、下がると気づかないまま決めてしまうことです。求人票の月給だけを見て応募し、入職後に賞与と加算の差で年間数十万円の違いが出ていた、という取り違えは起こります。
求人サイトだけで探すと不利になる理由
ここまでの話は、裏を返せば「求人票に書かれていない情報で差がついている」ということです。具体的には次の2点が、自分で探すときの壁になります。
1. 処遇改善加算の実態が求人票から読めない
処遇改善等加算は施設ごとに取得状況が違い、しかも取得した加算をどう職員に配分するかにも幅があります。求人票の月給欄からこれを読み取ることはできません。同じ「保育所・正職員・月給23万円〜」でも、実際の年収が数十万円違うということが起こります。
2. 賞与と加算の交渉を自分でやることになる
保育の現場は、給与交渉に慣れている人の方が少ない領域です。園側も、応募者から条件を細かく問われることを想定していない場合があります。結果として、提示された条件をそのまま受けることになりやすい構造です。
保育士専門のエージェントは、園ごとの加算取得状況や賞与の実績、離職の状況といった、求人票に載らない情報を持っていることがあります。求職者側の費用は無料で、料金は採用が決まった時に採用側が負担する仕組みです。2〜3社を併用して比較するのが基本形になります。エージェントごとに付き合いのある法人が違うため、1社だけだとその会社が持っている求人の中でしか比較できません。
動く前に、自分の適正年収を確かめる
ここまで読んで「では自分はいくらもらえるはずなのか」が分からないと、結局は動けません。そして、この基準を持たないまま相談に行くと、提示された条件が高いのか安いのかを判断できないまま話が進みます。
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よくある質問
保育士の給料は平均するといくらですか?
こども家庭庁の「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」では、私立保育所の常勤保育士の1人当たり給与月額は348,119円(平均勤続11.2年)でした。この金額は令和6年3月分の月額給与に令和5年度の賞与の1/12を加えたものです。公立保育所の常勤保育士は365,542円(同10.6年)で、勤続年数が短いにもかかわらず月あたり約1.7万円高くなっています。
保育士は施設の種類によって給料がどれくらい違いますか?
同じ調査の私立施設・常勤で比較すると、保育所が34.8万円、幼稚園(新制度)が33.5万円、認定こども園が33.2万円、小規模保育事業(A型)が29.4万円、事業所内保育事業(B型適用)が27.9万円です。保育所と事業所内保育事業(B型適用)の差は月6.9万円で、単純に12倍すると年間約83万円の差になります。
保育士の給料は昔と比べて上がっていますか?
上がっています。私立保育所の常勤保育士の給与月額は、前回の平成31年度調査で30.2万円だったのに対し、令和6年度調査では34.8万円で、5年間で4.6万円増えました。幼稚園(新制度)は+4.8万円、認定こども園は+5.2万円です。処遇改善等加算などの施策が反映されているため、数年前の相場観のまま判断すると実態とずれます。
パート・非常勤でも公立の方が高いですか?
逆転します。保育所の非常勤保育士の給与月額は、私立が243,404円、公立が190,521円で、私立の方が月あたり約5.3万円高いという結果でした。常勤は公立の方が高い一方、非常勤では私立の方が高くなっているため、常勤・非常勤のどちらで働くかによって有利な選択肢が変わります。
保育士資格がない場合とどれくらい違いますか?
私立保育所の常勤で比較すると、保育士が348,119円、資格を有していない保育補助者が254,396円で、月あたり93,723円の差があります。年間では約112万円に相当します。
ブランクがあっても相談できますか?
できます。復職支援に力を入れている法人や、教育体制を整えている園を条件に含めて探せます。ブランクの長さと、復帰後に常勤・非常勤のどちらを希望するかを最初に伝えておくと、話が早く進みます。